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日当たりのよい居間で、猫と飼い主がそれぞれのペースでくつろぐAI生成イメージイラスト
公式情報等を基に調査

猫と飼い主のオキシトシンは連動する?29匹・19人の研究と限界

先に結論

猫29匹・飼い主19人の研究を解説。ホルモン解析は猫24匹・17人。尿中オキシトシンと日常の近さ、気分の関連を、小規模な観察研究としての限界や研究費・利益相反申告とともに確認します。

結論: 2026年10月15日、京都大学と麻布大学は、猫と飼い主の尿中オキシトシン濃度に関連が見られ、日常の近さの指標が高い飼い主ほど「活気・活力」が高い傾向があったと発表しました。ただし、これは「猫をなでると幸せホルモンが増える」「猫を飼えば気分が改善する」と証明した研究ではありません。対象は猫29匹、飼い主19人で、ホルモン解析は採尿できた猫24匹とその飼い主17人のデータです。少数の家庭を調べた探索的な観察研究で、因果関係は示していません。

何が発表された?

京都大学の高木佐保特定助教と麻布大学の菊水健史教授らの研究チームは、学術誌 iScience に論文 Cats and humans show correlated affiliative physiological states を発表しました。研究では、猫と飼い主のホルモン状態、家の中での距離、飼い主の気分を調べています。

項目 内容
研究対象 飼い主19人(女性16人・男性3人)、猫29匹
猫の年齢 生後4〜162か月(約13歳半)
期間 各家庭で約1か月
尿の採取・解析 1か月間にそれぞれ3回採取。猫5匹は採尿できず、ホルモン同士の解析は猫24匹・飼い主17人。各個体の採尿結果を平均して解析
ホルモン オキシトシン、コルチゾール
近さの測定 首輪のBluetooth Low Energy(BLE)ビーコンとスマートフォンで電波強度を記録。検出期間中の月間中央値を近さの指標に使用
気分の評価 日本語版短縮POMS2質問紙に期間中1回回答
研究の種類 事前登録のない探索的な観察研究。1か月の集約指標の横断的な関連を解析

研究で確認された4つの関連

1.猫と飼い主のオキシトシン濃度に正の関連

オキシトシンは、社会的なつながりに関係するホルモンとして知られます。今回の研究では、飼い主の尿中オキシトシンが高いほど、猫の尿中オキシトシンも高い傾向が見られました。

ただし、各個体について1か月の採尿結果を平均した値の関連であり、同じ瞬間にホルモンが上がり下がりする「同期」を示したわけではありません。同じ生活環境や生活リズムが影響した可能性もあります。

2.飼い主のコルチゾールと猫のオキシトシンは逆向きの関連

ストレス反応の指標として使われるコルチゾールについては、飼い主のコルチゾールが高いほど猫のオキシトシンが低い傾向が見られました。一方、猫と飼い主のコルチゾール同士には明確な関連は認められていません。

これを「飼い主がストレスを感じると猫にもストレスが移る」と言い切るのは不正確です。測定したのはホルモン指標の関連であり、感情の伝染や因果関係ではありません。

3.猫のオキシトシンと飼い主のネガティブな気分に関連

猫と飼い主の組を単位にした解析では、猫のオキシトシンが高いほど、飼い主の「緊張・不安」「怒り・敵意」「抑うつ・落込み」などの評価が低い関連が報告されました。

ただし、多頭飼いでは同じ飼い主の気分が複数の組に使われます。家庭ごとにまとめ直した感度分析で関連が保たれたのは「混乱・当惑」と「緊張・不安」で、その他の猫のオキシトシンと気分の関連は不確かになりました。結果は解析方法にも左右されます。また、飼い主の気分が猫との接し方に影響した可能性も否定できません。

4.猫と近くで過ごすことと飼い主の活気に関連

研究では、ビーコンによる日常の近さの指標と、飼い主の「活気・活力」に正の関連がありました。この関連は家庭ごとにまとめた感度分析でも保たれました。同居期間の長さと活気には明確な関連がありませんでした。

ビーコンの電波強度は、家の間取りや建材などにも影響されます。今回の指標は検出期間中の月間中央値で、近くで過ごした合計時間や時間の割合ではありません。「何分なでればよい」という接触時間や、時間を増やした場合の改善効果は示していません。

研究の限界:猫を飼うと幸せになる、と断定できない理由

この研究は新しい発見につながるものですが、結果をすべての家庭へ一般化することはできません。

  • 人数が少ない: 飼い主は19人。女性が16人で、参加者の構成に偏りがあります。
  • 解析対象と独立性に制約がある: ホルモン同士の解析は猫24匹・飼い主17人です。多頭飼いの家庭もあり、猫と飼い主の組がすべて独立しているわけではありません。
  • 事前登録のない探索的研究: 複数の指標の関連を探索しており、今後の再現研究が必要です。
  • 因果関係は不明: 猫と過ごしているから気分がよいのか、元気な人ほど猫と近くで過ごすのかは区別できません。
  • 共通環境の影響: 飼い主と猫は同じ家で生活します。生活音、気温、日課などの共有条件が結果に影響した可能性があります。
  • 測定時点がそろっていない: 気分は期間中1回、ホルモンは採尿結果の平均、近さは月間の集約値です。飼い主は朝の尿、猫は採取可能な時間の尿であり、同時の変化を追跡した解析ではありません。
  • 長期の健康効果は測っていない: 病気の予防、うつ病の治療、猫の健康改善を検証した研究ではありません。

資金提供・利益相反について

2026年10月16日に原著論文の「Acknowledgments」と「Declaration of interests」を直接確認しました。支援として、日本学術振興会特別研究員奨励費(22KJ2970)、科学研究費助成事業・学術変革領域研究(A)(26A102)、日本ねこ医学会・上田綾子基金研究助成、京都大学白眉プロジェクトが記載されています。

利益相反については、著者らが競合する利益はないと申告しています。これは論文に記載された著者の申告を確認したもので、本サイトが独立に利益関係を監査したという意味ではありません。

飼い主が日常生活で参考にできること

ここからは研究結果そのものと区別した、日常の関わり方についての一般的な考え方です。今回の研究から特定の用品や接し方の効果が証明されたわけではありません。それでも、猫と人の関係を考えるきっかけにはなります。

猫が自分から近づいてきたとき、無理のない範囲で一緒に過ごすこと。逆に、猫が離れたいときまで抱いたり、なで続けたりしないこと。接触の量を競うより、猫が隠れたり休んだりする自由を残す方が暮らしに役立ちます。

猫が安心して過ごせる部屋を整えたい場合は、関連記事「室内飼いの猫が退屈しにくい部屋づくり」も参考にしてください。行動を観察するときは、普段との変化を手がかりにし、「甘える・甘えない」だけで健康や愛着を決めつけないことが大切です。

まとめ

京都大学と麻布大学の研究は、猫と飼い主のオキシトシン濃度が関連する可能性を、家庭での採尿と距離測定を組み合わせて示しました。しかし、猫29匹・飼い主19人の観察研究であり、猫を飼うことが人の心を治療する、猫と長時間接すれば健康になる、といった結論ではありません。

日常で取り入れるべきことは、猫との接触時間を増やすノルマではなく、その猫のペースを尊重して安心できる関係を保つことです。

出典・参考資料

情報確認日:2026年10月16日。大学発表は10月15日付です。原著論文の出版社ページには「October 13, 2026」と表示され、大学発表ではオンライン掲載時刻を10月14日午前11時(米国東部時間)と案内しています。日付の表示に相違があるため、両者を区別して記載します。本記事の公開日は2026年10月16日です。

  1. 京都大学|ネコと飼い主、オキシトシン濃度が相関(2026年10月15日)
  2. 麻布大学|研究手法・研究の限界・研究費(2026年10月15日)
  3. 原著論文本文(iScience):Takagi S, Tsubomura T, Nagasawa M, Kikusui T. Cats and humans show correlated affiliative physiological states. iScience. 2026. DOI:10.1016/j.isci.2026.117934

※本記事は大学発表と原著論文本文(結果・方法・限界・研究費・利益相反申告)を基に構成しました。疾患の診断や精神的な不調への治療を目的としたものではありません。サムネイルはAIで作成したイメージイラストで、実際の研究参加者や研究場面を示すものではありません。

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