この記事の前提: 米国の飼料・ペットフード基準団体AAFCOが、猫のカルシウムとリン(Ca/P)に関する栄養プロファイルの改定を承認しました。ただし「日本で販売中の猫用フードが一斉に危険になった」「すべての猫は低リン食に切り替えるべき」という意味ではありません。2026年10月18日時点の一次資料を基に、確認できた事実と未確認の点を分けて解説します。
結論|米国で基準の改定が承認され、メーカーの移行方法が示された
米国のAAFCO(Association of American Feed Control Officials)は2026年10月13日、猫用フードのカルシウム・リンの栄養プロファイル改定について、州の規制当局が移行期間をどのように扱うかという公式方針を発表しました。
改定の検討は2023年に設置された専門家パネルに始まり、2025年1月に成果が報告され、2026年8月のAAFCO年次会合で会員によって承認されています。10月13日に初めて栄養基準そのものが成立したのではなく、今回はその実装と取り締まりの運用に関する発表です。
出典:AAFCO「Ca/P Enforcement Update」(2026年10月13日)
時系列|何がいつ決まった?
| 時期 | 確認できた出来事 | 注意点 |
|---|---|---|
| 2023年 | AAFCOのカルシウム・リン専門家パネルを設置 | 新規の1件の臨床試験ではなく、栄養基準を見直す専門家検討 |
| 2025年1月 | 専門家パネルの知見をペットフード委員会で報告 | 報告段階と最終承認は別 |
| 2026年8月 | AAFCO年次会合で改定プロファイルを会員が承認 | 改定内容の適用には実務上の移行が必要 |
| 2026年10月13日 | 移行期の執行裁量について方針を公表 | 米国内の各州は独自の規制判断権限を持つ |
カルシウムとリンは、なぜ一緒に見直される?
カルシウム(Ca)とリン(P)は、骨格などの維持に必要なミネラルです。猫用フードでは、どちらか一方の量だけでなく、摂取量と両者のバランスを考える必要があります。
ただし、リンを少なくすれば少なくするほど健康によいわけではありません。成長期の子猫と成猫では栄養要求が異なりますし、療法食が必要な猫では病気の種類・検査値・食欲・摂取エネルギーなどによって食事の選択が変わります。
「リンが入っているから悪い」「Ca:P比だけで商品の優劣が決まる」といった見方は適切ではありません。
メーカーはどのように対応する?
AAFCOが説明した移行作業には、フードの配合確認、栄養学的な適切性の検証、成分分析、品質管理の更新、製造工程の調整などが含まれます。
今回の方針では、米国で進行中のペットフード表示近代化計画「PFLM」の移行スケジュールと、猫のCa/P基準への対応を合わせるよう州の規制当局に勧めています。移行期間中は、まだ新基準に適合していない商品への執行を控えるよう推奨するものです。ただし州が最終的な規制判断を行う権限を保持しています。
また、新しい表示様式に切り替えていない従来ラベルの商品も対象であり、ラベルを先に刷新しないと新しい栄養基準に対応できない、という仕組みではありません。
これは「改定が無効になった」という意味ではありません。
出典:AAFCO公式発表/補足:PetfoodIndustry(2026年10月14日)
新しいリンの上限値はいくつ?
本記事で確認したAAFCOの10月13日付け公式案内と移行方針全文には、改定プロファイルの具体的な数値一覧は掲載されていません。新しいリン・カルシウムの上限値は、今回の確認資料だけでは断定しません。
海外メーカーの解説資料には上限値などの説明がありますが、メーカーには自社製品の開発・販売に関する商業的な利害があります。正式なAAFCOの改定表の原文と照合できない値を、確定した「全猫共通の推奨値」としてこのページに転載することは避けました。
成分表示の単位にも注意が必要です。現物重量に対する「%」、乾物換算、カロリー当たりの摂取量は同じ尺度ではありません。異なる単位の数値をそのまま比較すると誤解につながります。
参考資料(メーカーの解釈であり、AAFCO原文の数値表そのものではない): Simmons Pet Food「Phosphorus in Feline Nutrition」(2026年9月29日)
日本のキャットフードもすぐ変わる?
AAFCOは米国の飼料・ペットフード栄養基準に関わる団体です。今回の発表がそのまま日本国内での一律の法律改正や全商品の回収につながるものではありません。
ただし、日本で「総合栄養食」と表示する際には、栄養基準に基づく分析試験や給与試験などが関係します。日本の表示制度については、ペットフード公正取引協議会の表示の基礎知識が参考になります。
同協議会は、フードを「総合栄養食」「間食」「療法食」「その他の目的食」などに分けています。主食として選ぶときには、フード名よりも、総合栄養食に該当するか・どの成長段階向けか・給与量はどのくらいかを先に確認してください。
海外の栄養基準の更新が国内各社の商品仕様や表示へどう反映されるかについては、各メーカーの正式案内を待つ必要があります。
総合栄養食と療法食は、使う目的が異なる
総合栄養食は、指定された成長段階の猫が、そのフードと水で日常の健康維持に必要な栄養をとれるよう調整された主食です。商品名だけでなく、対象の成長段階と給与量を確認します。
療法食は、特定の病気や健康状態にある猫の栄養面の管理を目的とし、獣医師の指導のもとで使います。病態に合わせて栄養素の量や比率が調整されるため、一般の健康維持食とは設計が異なります。「腎臓の健康維持に配慮」と書かれた一般のフードが、腎臓病用療法食と同じ用途になるわけではありません。
| 猫の状態 | 食事で確認すること | 今回のニュースとの関係 |
|---|---|---|
| 健康な猫 | 猫用の総合栄養食、成長段階、適切な給与量 | 低リンという言葉だけで療法食へ切り替える根拠にはならない |
| 慢性腎臓病(CKD)の猫 | 病期、検査値、体重・筋肉、食欲、併存疾患に応じた個別の栄養管理 | 一般食の栄養基準の改定から、療法食の変更・中止を自己判断しない |
CKDの猫では、リンの管理だけでなく、食べられる量や必要なエネルギーも含めて主治医と調整します。健康な猫とCKDの猫へ同じ食事条件をそのまま当てはめることはできません。
出典:ペットフード公正取引協議会の総合栄養食とライフステージ・療法食について、IRISのCKD診療指針。表示の読み方は、当サイトのキャットフードの選び方|総合栄養食とライフステージを確認も参考にしてください。
腎臓病の猫は、今の食事を変えた方がよい?
改定ニュースを理由に、獣医師の指示がある療法食を自己判断で中止・変更しないでください。
一般の健康な猫向けの栄養プロファイルと、慢性腎臓病などの管理に使う療法食は、目的と設計が異なります。必要な栄養素を確保しながら病態に合わせて調整する必要があるため、単に「低リン」という文字だけで食品を選べません。
健康なシニア猫だから一律に腎臓病用フードへ切り替える必要がある、という意味でもありません。食欲が落ちている場合は、リンだけでなく、食べられる量やカロリーの確保も重要です。
詳しくは、当サイトの2026年猫の腎臓病ガイドライン解説と、猫用療法食と一般食の違いを解説した記事も参考にしてください。
研究の根拠と、まだ分かっていないこと
今回のAAFCO発表は栄養基準の専門家検討および規制実務についての案内であり、新たに一定数の猫を集めて製品を比較した臨床試験の結果ではありません。したがって「改定後のフードを食べた猫で何%病気が減った」という治療・予防効果を、この発表から算出することはできません。
- 研究規模: 今回の10月13日発表に、新規の猫の対象頭数はありません。
- 研究デザイン: 2023年からの専門家パネルによる既存知見の検討を経た栄養基準改定と、行政運用に関する方針です。
- 利益相反: AAFCOの今回の公開案内だけでは、専門家パネル全員の利益相反を網羅的に確認できませんでした。業界メーカーによる解説資料には製品開発上の商業的利害があります。
- 未確定事項: 今回確認した公開資料だけでは最終的な数値表の細部、日本国内製品への反映予定、州ごとの具体的な実施状況を十分に確認できません。
「米国の基準が改定される」というニュースと「特定のフードに臨床的な優位性がある」という主張を混同しないことが大切です。
飼い主が今できること
今回の発表だけを理由に、すぐにフードを総入れ替えする必要があるとは判断できません。今使っている商品のパッケージで、対象年齢・総合栄養食かどうか・与える量を確認し、必要であればメーカーの栄養成分表も見ておきましょう。
慢性腎臓病などで通院している猫は、最近の血液検査や尿検査、体重、食欲、投薬内容とあわせて主治医へ相談してください。自己判断で食事を減らしたり、食べない状態を長引かせたりしないことが重要です。
よくある質問
Q. 今の猫用フードは危険になったのですか?
A. そのような発表ではありません。米国の栄養基準の改定と、メーカーが対応するまでの移行の取り扱いが示されたものです。個別商品の安全性については、成分と対象猫の状況を別途確認する必要があります。
Q. リンは少ないほどよいのですか?
A. いいえ。リンも必要な栄養素です。適切な量や比率は、成長段階や健康状態、総摂取量などに左右されます。
Q. 日本のメーカーはいつまでに対応するのですか?
A. 今回のAAFCOの発表から、日本国内の一律の対応期限は確認できません。各社の公式案内や日本での表示制度を確認してください。
まとめ
2026年10月13日のAAFCO発表の中心は、8月に承認された猫用フードのカルシウム・リン栄養プロファイル改定を、米国の各州が移行期間にどう扱うかという点です。
一般の猫用フードを一律に危険視するものでも、腎臓病用療法食への切り替えを促すものでもありません。飼い主は「総合栄養食」「対象年齢」「個別の健康状態」を確認し、病気の猫の食事変更は獣医師と相談するのが適切です。
出典・参考資料
- AAFCO. Ca/P Enforcement Update. 2026年10月13日(一次情報)。
- AAFCO. Enforcement Discretion Related to Feline Calcium and Phosphorus Nutritional Profile Updates. AAFCOが公開した方針全文(文書表記は2026年7月10日 Version 7、一次資料)。
- PetfoodIndustry. AAFCO aligns feline calcium, phosphorus enforcement with PFLM. 2026年10月14日。
- ペットフード公正取引協議会. ペットフードの目的について(日本の表示制度)。総合栄養食の定義、療法食の定義も参照。
- Simmons Pet Food. Phosphorus in Feline Nutrition: What AAFCO’s New Phosphorus Recommendations Mean for Cat Food Formulation. 2026年9月29日(メーカー資料、商業的利害に留意)。
- International Renal Interest Society. IRIS Guidelines(2026年改訂資料への案内)(CKD管理の個別化)。
情報確認日:2026年10月18日。公開された公式情報等を基に整理した調査記事です。メーカーへの取材や製品の使用試験は行っていません。アイキャッチはAI生成のイメージイラストで、実際の商品・飼育環境の写真ではありません。
