大きな地震のあと、猫が隠れる、食べない、水を飲まない、眠りが浅い、トイレがいつもと違うときは、単なる「怖がり」で片づけず、少なくとも1週間は普段との差を記録してください。まず人と猫の安全を確保し、静かな隠れ場所、いつものフードと水、使い慣れたトイレを戻します。何度も排尿姿勢を取るのに尿がほとんど出ない、痛そうに鳴く、嘔吐や強いぐったりがある場合は、災害時でも動物病院へ直ちに連絡すべき緊急サインです。
2026年9月1日にCatlog総合研究所が公開した分析では、7月28日の令和8年熊本地震の前後に、熊本県に住むと思われるCatlog利用猫約170匹で、食べる・水を飲む・眠る・毛づくろい・歩く・排尿などの変化が見られました。発表日は9月1日、対象となった出来事は7月28日から約2週間です。
ただし、これは査読論文ではなく、企業が自社機器の継続取得データをまとめた公開分析です。地震後も自宅で通信・計測を続けられた家庭が中心で、避難所へ移動した猫や停電・通信断の影響が大きかった家庭は十分に含まれません。この記事では、数値をすべての猫に当てはまる基準にせず、地震後に飼い主が確認する順番へ置き換えて紹介します。
結論|地震後7日間は5項目を「普段と比べる」
| 見る項目 | 記録する内容 | 注意したい変化 |
|---|---|---|
| 食事 | 食べ始めた時刻、回数、おおよその量 | いつもの食事へ近づかない、嘔吐を伴う |
| 飲水 | 水場を使った回数、水皿の減り | 水場へ近づかない、極端な増減 |
| 睡眠・行動 | 隠れる、歩き回る、短く何度も起きる | 落ち着かなさや反応低下が続く |
| 毛づくろい | 時間帯と長さ、同じ場所ばかり舐めないか | 急な増減、皮膚を傷めるほど続ける |
| 排尿 | 回数、尿塊の大きさ、姿勢、鳴き声 | 出ない、少量を繰り返す、痛がる、血が混じる |
大切なのは他の猫の平均値ではなく、その猫の平常時との差です。停電で自動記録が止まった場合も、紙やスマートフォンに時刻と様子を残せます。隠れている猫を無理に引き出すより、安全な場所から食事・水・トイレへ移動できる経路を作り、遠くから確認します。
約170匹のデータで地震当日に起きたこと
Catlog総研の前編は、登録情報から熊本県に住むと思われる利用猫約170匹を「熊本群」とし、同じ時期の国内数万匹を「全国群」として比較しました。猫ごとの個体差が大きい食事や行動は、本震前7日間の平均を基準に変化率を算出しています。
| 指標 | 報告された主な変化 | 読み取り方 |
|---|---|---|
| 元気スコア | 本震前98.9から当日91.7(-7.2%) | 複数行動をまとめたCatlog独自指標。診断値ではない |
| 食べる回数 | 本震当日に-16.9% | 実際の摂取量ではなく、計測された回数の変化 |
| 水飲み回数 | 本震当日に-13.4% | 飲水量そのものを示す数値ではない |
| 毛づくろい時間 | 当日-22.0%、7月30日〜8月2日は本震前より10%以上高い水準 | 減少と増加の両方が起き、原因はデータだけで診断できない |
| 歩く・走る時間 | 翌日に+23%、増加傾向は約1週間 | 警戒の可能性はあるが、すべてを恐怖反応と断定しない |
地震そのものだけでなく、給餌や給水の中断、家具の移動、飼い主の行動、余震、停電、暑さも同時に変わり得ます。そのため「地震が直接この行動を起こした」という因果関係ではなく、地震後の生活環境全体と同時に起きた関連として読む必要があります。
睡眠と排尿の変化は数日遅れて現れた
睡眠スコアは本震前87.7から翌日に82.5(-6.0%)となり、睡眠時間は翌日に-9.6%でした。長い睡眠の回数は本震当日に-11.5%、短い睡眠の回数は翌日に+16.5%、「くつろぐ」時間は翌日に+23.8%です。総睡眠時間は比較的早く戻っても、短い睡眠や覚醒に近い休息が増え、落ち着かない状態が残った可能性があります。
後編の排泄分析では、1匹あたりの平均排尿回数が本震前1.93回から7月31日に1.71回(-11.2%)、排尿重量が85.4gから66.5g(-22.1%)へ減りました。これは全猫の正常回数・正常尿量を示す基準ではありません。自動トイレが推定した群平均であり、家庭では普段の尿塊や回数との比較が現実的です。
さらに8月3〜4日には、トイレ入室回数と排泄時間に関する機器アラートが一時的に増えました。同じ8月3日、気象庁の記録では熊本市の最高気温が40.3℃に達しています。余震、飲水行動、暑さ、飼育環境が重なっており、どれか一つを原因と断定することはできません。
この分析で分かること・分からないこと
| 分かる範囲 | 分からない範囲 |
|---|---|
| 継続計測できた熊本群で、複数の行動指標が地震前後に変化した | 熊本県のすべての猫、避難した猫、機器を使わない猫でも同じ割合か |
| 食事・飲水・睡眠・排尿の変化時期は一致しなかった | 個々の猫の変化が地震、余震、暑さ、停電のどれによるものか |
| 約1週間続いた指標があり、当日だけの観察では見落とし得る | 行動変化から膀胱炎、尿道閉塞、脱水などを診断できるか |
| 平常時データがあると変化に気づきやすい | Catlogなど特定機器がなければ健康管理できないか |
Catlog自身も、機器は病気を診断するサービスではなく、日々の傾向の変化に気づくためのものと説明しています。査読の有無、利用者に偏った対象、停電・避難家庭が抜けやすい選択バイアスを踏まえ、今回の割合を「地震後の猫は必ず22%尿が減る」といった予測には使えません。
一方、東日本大震災後に福島県の二次動物救護施設へ収容された猫を調べた2017年の疫学研究では、災害時の収容前対策や、収容環境でのストレス低減・環境整備の重要性が示されています。対象も状況も今回とは異なりますが、災害前から運搬・避難環境へ慣らす意義を補強する資料です。
最初の24時間|安全といつもの資源を戻す
- 脱走と二次災害を防ぐ:窓、網戸、倒れた家具、割れ物、火気を確認し、猫がいる部屋の出入口を不用意に開けません。
- 隠れ場所を確保する:キャリーや箱に使い慣れた敷物を入れ、騒音・人の出入りが少ない場所へ置きます。安全が確認できる限り、無理に抱き出しません。
- 水と食事を戻す:普段使う器とフードを、隠れ場所から移動しやすい位置へ用意します。療法食を使っている猫は、災害を理由に自己判断で別の食事へ置き換えません。
- トイレを使える状態にする:倒れた物や騒音で近づけない場合は安全な場所へ追加し、猫砂を急に全量変更しません。
- 時刻を記録する:最後に食べた、飲んだ、排尿した時刻と、呼吸・嘔吐・歩き方を残します。受診時の情報になります。
室内の危険物は猫のいる家の安全チェックリスト、水場の分散は猫の水飲み場の置き方もあわせて確認してください。
2日目〜7日目|落ち着いたように見えても記録を続ける
Catlog分析では、食事や睡眠の一部が戻った後も、歩く・走る時間、毛づくろい、「くつろぐ」時間などに約1週間の変化が残りました。見た目が静かでも、眠れているのか、緊張して動けないのかは外見だけで区別しにくいことがあります。
- 食事・水・トイレ・隠れ場所を互いに近づけすぎず、犬や相性の悪い同居猫と動線を分ける
- 余震のたびに追いかけたり抱き上げたりせず、猫が接触を選べるようにする
- 毛づくろいの増加は落ち着こうとする行動の可能性もあるが、皮膚病や痛みを除外せず、部位と頻度を記録する
- 短い睡眠や歩き回りが続く場合は、照明、室温、物音、来客、家具配置を見直す
- 排尿回数だけでなく、姿勢、時間、鳴き声、尿塊の大きさ、血の有無を確認する
AAFP・ISFMの猫の環境ニーズ指針は、安全な場所、分離した生活資源、遊び、予測可能で肯定的な人との関わり、猫の嗅覚を尊重する環境を5つの柱として整理しています。災害後も、すべてを一度に新しくするより、使い慣れたにおいと日課を少しずつ戻す方が実行しやすいでしょう。
受診を急ぐサイン|排尿できない状態は様子見しない
Cornell Feline Health Centerは、尿道閉塞を直ちに獣医療が必要な緊急事態としています。何度もトイレへ行く、力む、ほとんどまたはまったく尿が出ない、痛そうに鳴くといったサインは、単なる地震ストレスと自己判断しません。特に雄猫は尿道閉塞のリスクが高いとされています。
| 状態 | 対応 |
|---|---|
| 排尿姿勢を繰り返すのに尿が出ない・ごく少量、痛がる | 動物病院へ直ちに電話し、受診可能な施設と移動方法を確認 |
| 呼吸が苦しそう、口を開けて呼吸、倒れる、反応が鈍い | 涼しく安全な場所へ移し、直ちに救急対応を相談 |
| 繰り返す嘔吐、強いぐったり、外傷や出血 | 災害ストレスだけと決めず、早急に獣医師へ相談 |
| 隠れる、食事や水が減るが、排尿・呼吸・反応は保たれる | 静かな環境で記録を続け、改善しない・悪化する場合は受診相談 |
受診先が被災している可能性もあるため、移動前に電話や公式情報で開院状況を確認します。人用の薬、余っている動物用薬、療法食を自己判断で使ってはいけません。本記事は診断や治療の代わりではありません。
自動見守り機器は診断の代わりにならない
首輪型センサー、自動給餌器、給水器、カメラ、自動トイレは、平常時の傾向を知る補助になります。しかし停電、通信断、電池切れ、猫が機器を使わない状況ではデータが途切れます。アラートがないことは安全の保証ではなく、アラートがあることも病名の確定ではありません。
今回の主資料はCatlogを提供するRABOの自社分析であり、同社製品の販売と利害関係があります。そこで本記事では特定製品の購入導線を設けず、紙の記録でも実行できる観察項目を中心にしました。機器を選ぶ場合は、計測対象、電池・通信、複数猫の識別、手持ちのトイレとの適合、データの扱いを確認してください。
平常時にしておく4つの備え
- キャリーへ慣らす:普段から扉を開けて置き、寝床や隠れ場所として使えるようにします。練習は猫をキャリーに慣らす方法を参考にしてください。
- 猫ごとの平常記録を作る:食事、飲水、排尿、排便、睡眠、服薬を普段から簡単に記録します。
- 持ち出し情報を更新する:飼い主と預け先の連絡先、猫の写真、ワクチン・治療・服薬記録、かかりつけ病院を紙とスマートフォンの両方へ保存します。
- 自治体の避難ルールを確認する:同行避難は、避難所で人と同じ居室に入れることと同義ではありません。受入条件と代替の預け先を平常時に確認します。
環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」一般飼い主編も、住まいの安全、健康管理、キャリー等への慣らし、所有者明示、物資、避難先の確認を平常時の備えとして案内しています。
よくある質問
地震の前に猫が騒いだら、予知できたと考えてよいですか?
いいえ。今回のCatlog分析は地震後の変化が中心で、個々の行動から次の地震を予知できると示したものではありません。落ち着かない行動には痛み、騒音、室温、同居動物など多くの原因があります。地震情報は気象庁など公的機関を確認してください。
地震後に隠れて出てこない猫を引っ張り出すべきですか?
その場所が安全で、呼吸や反応を確認できるなら、無理に引き出さず、静かな動線と水・食事・トイレを用意します。倒壊、火災、浸水、脱走の危険がある場合は人の安全を確保しつつ、キャリーへ収容して避難を優先します。
おしっこが何回なら正常ですか?
年齢、食事、水分摂取、病気、猫砂、計測方法で異なり、一律の正常回数は決められません。普段の回数と尿塊を基準にし、少量を何度も繰り返す、力む、鳴く、尿が出ない場合は回数にかかわらず緊急相談してください。
食べないのは何日まで様子を見られますか?
猫の年齢、持病、体格、飲水、嘔吐などで緊急度が変わるため、日数だけでは決められません。子猫、高齢猫、療法食・投薬中の猫、ぐったりや嘔吐を伴う猫は早めに獣医師へ相談してください。
停電で自動トイレやセンサーが止まったらどう記録しますか?
通常のトイレと水皿を安全な場所へ追加し、最後に食べた・飲んだ・排尿した時刻、尿塊、姿勢、鳴き声を紙へ残します。電源復旧後も、空白期間を機器の「変化なし」と読み違えないでください。
まとめ|当日だけでなく7日間の流れを見る
2026年9月1日公開のCatlog総研分析では、令和8年熊本地震後、食事・飲水・元気は当日に、睡眠は翌日に、排尿は数日後に大きな変化が見られ、歩く・走る、毛づくろい、休息の変化が約1週間残りました。ただし、約170匹の機器利用猫を対象にした企業分析であり、全猫に同じ割合が起きるとはいえません。
安全確保、静かな隠れ場所、いつもの水・食事・トイレ、5項目の記録、緊急サインなら即時相談。この順番を平常時から家族で共有しておくと、災害直後に判断する項目を減らせます。
出典
- Catlog総研|令和8年熊本地震で猫様に起きた変化(前編)
- Catlog総研|令和8年熊本地震で猫様に起きた変化(後編)
- 気象庁|令和8年熊本地震 ポータルサイト
- 気象庁|最新の気象データ(熊本の2026年8月3日最高気温記録)
- 環境省|人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>
- 環境省|ペットの災害対策
- Journal of Feline Medicine and Surgery|AAFP and ISFM Feline Environmental Needs Guidelines
- Cornell Feline Health Center|Feline Lower Urinary Tract Disease
- International Cat Care|Cat Carer Guide to Lower Urinary Tract Diseases
- Centers for Disease Control and Prevention|Be Prepared: Pet Safety in Emergencies
- Preventive Veterinary Medicine|Epidemiological evaluation of cats rescued after the Great East Japan Earthquakes
- Journal of Veterinary Behavior|Behavioral, physiologic, and endocrine observations during emergency triage after urban explosions
アイキャッチはAI生成のイメージイラストです。実際の商品・飼育環境の写真ではありません。
